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2005年 6月12日

“小ロット・低価格”を追求する - 【P板.com】澤野裕悟様

■大手企業からの独立・起業

【P板.com】澤野裕悟様

 今回ご紹介するのは、産業機器などに幅広く使われている“プリント基板”を、小ロット・低価格での販売を行われている 【P板.com】 のWebマスター澤野裕悟様だ。同サイトは、大手商社からの独立組で設立された株式会社インフローによって運営されており、大手企業では実現しづらいと思われるような小回りの効くサービスを提供し、着実に成長されているようだ。同社のような “ネット専業” として営業されているBtoB企業も珍しくなくなってきた感があるが、同社の製造から集客までの一連の流れはよく練られており、製造業者としては参考とするべき点も多いだろう。

【P板.com】トップページ

 同社は元々、専門商社「株式会社ミスミ」の出身者3名で設立された企業である。前職時代には、パソコン部品/半導体部品関連の業務に従事、事業化を目的としたリント基板市場の調査を行われていたのだが、同社の社長交代を契機に独立、2002年4月に起業されたのだそうだ。しかし、実際の営業開始となるサイト開設は2002年11月のことで、この半年間はシステム開発に費やされたそうだ。この時期は、「当初よりECのみのサービス展開を考えていたため、 6ヶ月間は売上げがなかったので、起業した当初のシステム開発中が最も大変でした。」 と、不安を抱えながらの船出だったという。

 業界のことを詳しく知っていた上で、十分に勝算があっての独立であったとしても、すぐに事業が軌道に乗る訳ではない。同社のように半年の準備期間を掛けるようなケースであれば、事前にしっかりと資金繰りがされていなければ不可能であるし、システムが完成すればすぐに受注が舞い込むというものでもないだろう。特に製造業に関しては様々な障害もあったはずだ。しかし現在の同社は、10名の人員で売上高「2.8億円」、顧客登録数「4,700」、取引実績「1,800社」と、業績は急成長を遂げているという。これは驚くべき成果であると言えるのではないだろうか。

■小ロット生産を可能としたシステム

イニシャルコストを大幅に削減

 同社が販売しているのは、小ロットでありながら徹底したコストダウンが図られた“プリント基板”である。産業機器メーカーを主体として、あらゆる産業で必要とされるパーツであり、「現状では、電気を通す機械には全てプリント基板を使用しているといっても過言ではないため、特にどのような業種・業態が多いということはありません。」と、幅広い業種が対象となるのだそうだ。

 しかし、これまでのケースであれば、こうしたプリント基板の製作には、フィルム費・シルク版代・作画費・ドリルデータ費用など様々なイニシャルコストが発生してしまい、小ロットの生産ほど割高感が感じられるものだった。例え後に大量生産するものであったとしても、初期の動作テスト段階で試作基板を作成する必要があり、開発費全体に占めるコスト比率も小さなものではなかったのだ。

 同社のサービスではここを改良し、様々なイニシャルコストを “無料” としているのだ。これはそれまでの業界の常識を覆すような大きなチャレンジだった。もちろん、「台湾、韓国の協力メーカーとコスト削減も含め、協力体制を築いています。」 こうした生産ラインとの連携が重要となってくるのは間違いないが、それ以外にも様々なコストダウンにへの仕組みがなされているようだ。片面・2層・4層の製造に限定するなどして基板の仕様を標準化する、フィルムや版の保管を行わず管理費を削減する、過度な設備投資を避ける、ネット販売に特化することで営業費を減らすなど、受注から生産・販売まで、徹底的に無駄を省かれている。

 また一般的には、数枚の基板であれば企業の技術者が自ら製作されるケースも多かったとのことであるが、何らかのミスによって動作しないことも当然あり得る。その度に、部品などの実装ミス・回路図ミスをチェックして、さらにバーツごとに検査、そして問題の部品の再手配など、大変な手間を掛けていたこともあったのだそうだ。しかし、同社ではより小ロットの発注がしやすいように、通常であれば数万円という追加費用が必要となる 「導通テスト」、いわゆる最終チェックの工程も無料で実施されているのだそうだ。こうした体制が整って初めて、コスト的に大きなメリットがあるサービスと認識されることになるのだろう。“安かろう悪かろう” では納得してもらうことが出来ないのは言うまでもないのだ。

 しかし、こうした戦略をとっているために、「小ロット専門の製造ラインとなるため、逆に量産を不得意とする仕組みとなっています。」 というような制約や、まだ現状では高度な技術が必要となる製品の生産も不向きになってしまうこととなる。これも小規模でニッチなニーズに対応することに特化しているためのことであり、それこそが同社がとった勝ち残るための戦略なのだ。

■CADソフトの無料配布も大きな武器に

無料配布されるCADソフト「CADLUS X」

 もう1点、同社の特徴的な点は、「CADLUS X」 というCADソフトの無料ダウンロードを行われていることだろう。CAD関連ソフトは非常に高価なものが多い中で、無料ソフトでありながらも“約 6,000点”という部品ライブラリを備えており、全く有料のものと遜色ないレベルなのだ。「CADは高価であり、基板を製作したくてもCADを購入できないという現状がありました。そこで、誰でも安価に基板を製造可能となるようにCADの無料配布が必要と考え、サービスを実行しました。」 現在のところ、1ヶ月で3,000件近いダウンロード件数があり、「無料配布をスタートして、CADLUSユーザーからの注文件数も伸びているため、集客効果はあります。」 と手応えを感じられているそうだ。

 同ソフトの扱いを開始する以前は、フリーのCADソフトをサイト上で紹介されていたそうだが、そこで作成されたデータでは若干ながらデータの訂正が必要なケースが多かったのだそうだ。細かな点とはいえ、これもコストアップ要因の一つであったのだが、「データ出力方法を標準化しているため、データ確認作業が容易になり、時間的なコスト削減につながっています。」 集客を見込みながらコストダウン効果もある、非常に優れた営業ツールとなっているようだ。

 また、このツールを効率的に使用するためには、部品ライブラリからのダウンロードが必要となるのだが、そのためには無料のユーザー登録が義務付けられている。そのユーザーに対しては 「登録ユーザーに対しては、メールマガジンという位置付けで定期配信を行っています。」 と、継続的なアプローチを試みている。さらに、同社はこのユーザー登録の際の入力項目をあえて多めに設定し、「90%以上は法人ユーザーのため、与信管理の意味合いも含め、敢えて敷居を高くしています。」 といった役割も持たせているのだそうだ。新規顧客への窓口として、これ以上ないほど最適な形といえるかもしれない。

 同社では広告宣伝として、「紙・ネットの媒体にこだわらず、広告出稿は行っていますが、可能な限り、費用対効果を測定可能な媒体に出稿するようにしています。」 との方針を持たれているとのことで、検索エンジンのキーワード広告への出稿など積極的に行われている。また、同社サービスはマスコミ各社に取り上げられることも多く、ここでも大きな宣伝効果を得ているようだ。マスコミ対策として、「企画を持ち込まれる場合もあるのですが、展示会の時期などは戦略的に弊社より打診する場合もあります。」 と、プレスリリースなどを効果的に使ったアプローチをされているものと思われる。使い方によっては大きな効果が得られるだけに、こうした方法も試してみる価値はあるだろう。

 同業他社の追随もあり、今後も競争は激しさを増していくに違いない。しかし、「現状の市場価格は弊社の標準価格が浸透したもののため、これ以上の価格競争を行うつもりはありません。サービスの付加価値により、他社との差別化を行っていきます。」 同社では価格競争を避け、より付加価値を高める方向に進まれるのだという。「現状では設計・製造・メタルマスク製造のサービス展開を行っていますが、今後は部品実装・部品調達までのワンストップサービスを展開予定です。」 現在のサービスを核として、より幅広くより使いやすい、そんな一段上の企業を目指されるのだろう。今後さらに大きく飛躍されていくことは間違い無さそうだ。

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