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2005年 9月12日

効果的な「ノベルティ」を目指して - 【株式会社カンミ堂】末永卓様

小口受注を増やすためにサイトを開設

【株式会社カンミ堂】末永卓様

 今回ご紹介するのは、「メモピット」 「どこでもマグ」 というノベルティ商品の製造・販売を行なっている 【株式会社カンミ堂】 のWebマスター末永卓様だ。同社が製造しているのは、パソコンのフレーム部分や壁面といった様々なスペースに、手軽にメモや写真などを留めておくことのできる便利なグッズで、これを企業名などを印刷して配る “ノベルティ用” として販売している。企業の販促担当者などが顧客となるビジネスであるが、BtoCサイトを開設してユーザーの投稿を集めることで、BtoBの受注にも繋げている。小ロットでの生産にも対応し、小規模な事業者の利用も多いという同社のWeb戦略などについて伺った。

【メモピット・ドットコム】トップページ

 同氏は元々、「外資系メーカーの営業マンでしたが、モノ作りに目覚めて1989年の末に独立しました。」 という経歴の持ち主だ。ちょうどその頃はバブル経済のピークを過ぎ、目に見えて景気が悪化してきている時期となる。そんな中で、「印刷加工の下請け仕事をしながら、競争力のある独自商品の開発に取り組みました。自分で価格を決められる商品を持ちたい一心でした。」 最も厳しい時期に敢えて、または最も苦しい時期だからこそ “脱下請け” への真剣な取り組みが必要だったのだろう。

 そうして完成したのが、現在も同社の主力商品となっている、両面が粘着シールとなっていて、その表面に何度でもメモを貼ったりはがしたりできる 「メモピット」 だ。大ヒットした文具 「ポストイット」 の関連企業に籍を置いていたこともあり、その逆発想で開発されたという。一緒に製造・開発に取り組んでくれるパートナー探しから始まって、適度な粘着力を得るために繰り返し試作を行い、約1年がかりで商品化にこぎつけたのだ。

 パソコンが一人に一台の時代となり、長い時間をパソコンの前で過ごすことも増えてきている。そんな方たちにとって、パソコンのモニター画面のフレーム部分はちょっとした付箋紙を貼ってスケジュール管理に使ってみたり、お気に入りの写真を飾ってみたりと、便利に活用できるスペースだ。同社のメモピットは、ユーザーにそのスペースをより便利に使えるというメリットを与えるだけではなく、粘着剤の間にペットフイルムを挟んでおいてそこに広告を印刷するという、販促ツールとしての役割も担うのだ。「配った先のお客様の身近な場所で便利に使っていただき、さりげなく広告をし続けることのできるツールです。広告の特等席である “お客様のパソコンフレームという広告枠を買う” ことが出来ることが最大のメリットになります。」

 1999年4月に販促グッズを集めた展示会に出展したのだが、目新しさもあって評判は上々だったという。しかし、実績の無さが敬遠され、なかなか採用決定にまでは至らないことが続いたが、数ヶ月ほど後から受注が入り始める。その後は、「『広告効果』 を売り物に、企業のノベルティとして広告代理店や印刷会社などを通して販売していました。」 と、比較的順調に実績を積み重ねていった。

 しかし、こうしたノベルティ用のビジネスにも問題が無い訳ではない。「大手広告代理店や百貨店外商など大口だけを対象にしていますと、1回の取引額は大きいのですが売上が不安定となりますし、製造ラインの調整、在庫シートの管理、資金繰りが大変になります。」 一見したところ受注効率は良さそうに見えてしまうのだが、バックヤードまでを考慮すると、決して理想的な訳ではないのだ。「小口を件数多く受注することで経営を安定させたいとの思いが強く、 2002年の春ごろからメモピットをネットでオーダーメイド販売する方法を探りはじめました。」 作業を標準化し、売上げを安定させるための方策として、サイト 【メモピット・ドットコム】 を開設したのが2002年10月のことだった。

 しかし、小口の受注を増やすということは、製造サイドには大きな負担となってしまう。「それが自社の強みになると頭では理解していても、一旦確立した量産体制を小ロットに対応できる体制に切り替えるのに時間がかかりました。まさに意識改革が必要でした。」 元より、タイトな納期が設定されている案件も多い。「お客様が展示会で配布されるなどご利用時期が決められている案件が多いので、時間との勝負になります。納期短縮が課題です。」 

 また、Webサイトからの受注であっても、サイトの買い物カゴを利用しての受注は全体の 「2割程度」 とのことで、「あとの多くはWebをチェックしてある程度理解された上で、『貴社の商品に興味があります』 『サンプルを見てみたい』 と問い合わせをしてこられます。その後サンプルをお送りし、ご予算に合わせた仕様をご提案します。」 Webサイトは “商談の窓口” としての機能を果たしているようだ。製造と販売が一体となって、同じ方向を目指して進んでいるからこそ、市場が広がってきていると言えるだろう。

BtoCサイトをBtoBに活かす

BtoBサイト【どこでもマグ・ドットコム】

 現在同社では、オリジナル商品 「メモピット」 の好評を受けて、第二弾となる 「どこでもマグ」 の販売も開始している。こちらはマグネットを使用したメモホルダーで、スチール内臓の粘着シールと強力なマグネットを組み合わせて、壁面でもガラス面でも使用できることができる商品だ。「最少ロット500個」 からオリジナル印刷が可能で、片手でメモを抜き差しできるなど機能面でも優れており、ノベルティとしての採用が急増している商品だ。

 商品のアイディアから、試作を繰り返して量産化の目途がつくまでに、ほぼ1年の期間がかかっているという。「粘着シートの定位置にスチールを埋め込む方法の確立に始まり、スチールの厚みと磁力のバランス、マグネットの底の形状など考えられるすべてのダミーサンプルを手作りしては試験しました。」 試行錯誤を繰り返しながらも、商品の発想には自信があったため、「ただ一度も苦労とは思いませんでした。」 と、焦ることなく開発を続けたのだそうだ。

 こうして商品は完成し、BtoBサイト 【どこでもマグ・ドットコム】 を2004年4月にオープンさせる。同年には財団法人日本産業デザイン振興会が主催する 「グッドデザイン賞」 を受賞、「受賞するまでは大変でしたが、その効果は大きく、大半のお客様がGマークシールの貼付を希望されます。採用して配る側にとっても自信を持ってお渡しできると好評です。」 ここから弾みがつき、早くも受注実績は 「300件」 を超えているという。先行していたメモピットの受注は 「2,000件ほど」 とのことであり、急速に受注実績を積み重ねているようだ。

 さらに「どこでもマグ」の販売に際しては、BtoBサイトとは別に、販売機能を持たないコンシューマー向けのサイト 【どこでもマグ・ドットコム】 を2005年7月からオープンさせている。ユーザーの使用例や取り扱い販売店の一覧など、一見したところ完全にユーザーを対象としたサイトに見えるが、「BtoCサイトは、実はBtoBにも大きな影響を与えているのです。」 と、コンシューマーだけに向けたものではないのだという。

 販促物として企業に採用されるための手順として、「重要なのは、『販促品として数ある候補の中からアイテムを決定するのは誰か?』 ということです。私は消費者だと考えています。」 まずはコンシューマーへの認知を最優先しているそうだ。「企業の販促担当者が限られた予算の中で、『お客様に喜ばれるもの』 イコール 『売れているもの』 を配りたいと考えるのは当然のことであり、その上で広告効果がどのくらいあるかを判断しています。」この担当者からの理解が得られるためにも、ユーザーが喜んで使用している状況を作り出すことも重要となってくる。

 「一番強いのは消費者という一般生活者であり、その生活者の評価が川下から川上に向かって絶対的な命令を下すことを考えると、生活者がお金を出しても欲しい商品をつくり、実際に店頭などで売れていることが、結果的に販促品として採用されるという逆からの考え方に基づいています。」 BtoBを成功させるという目的のためには、少し遠回りの感もあるが、こうしたアプローチもあり得るだろう。

 同社では、ユーザーからの投稿写真を集めた 「どこでもマグネット倶楽部」 というコンテンツを、ブログを使って公開しているが、もちろんこれも単純に利用者へのサービスという訳ではない。投稿を集めるために 「発売記念プレゼントに当選された方には投稿のお願いをしています。また先着で図書券プレゼントをしています。」 という仕掛けをして、「企業の販促担当者に見ていただき、配った先のエンドユーザーが便利に喜んで使っている生の様子を写真付きで確認してもらうことで、販促ノベルティとしての採用率を高めたいという狙いもあります。」 実際に、このページを見てから採用が決まる例も増えてきてるとのことであり、十分な効果は得られているようだ。

ノベルティのド定番を目指して

ノベルティー用に様々なデザインが可能

 Webショップなどで同社製品をノベルティとして利用する場合には、やはりコスト面で厳しいという印象を持つ方も多いと思われるが、「それぞれのショップで、集客に始まって、見込み客から最終の優良顧客にしていくというステップがあると思うのですが、どの段階のお客様にどういう配り方、渡し方をするかがとても重要だと思います。」 広く浅く配るという方法をとるよりは、「商品単価にもよりますでしょうが、一度購入いただいたお客様にお渡しし、リピート注文につなげるきっかけにするのが効果的です。」 こうした提案をしているそうだ。

 小ロットの受注用から始まった同社のネット販売であったが、「5千〜1万セットでのご注文も増え始め、ネット経由での一回のご注文が100万円を超えても驚かない様になりました。」 着実に売上げを伸ばしてきている。「『メモピット』 と 『どこでもマグ』、両方で2,000万円を超える月もありますが、まだまだ波が大きいため安定させることが目下の課題です。」 ネット上での広告宣伝はOvertureやGoogleのPPC広告を利用しているのみだとのことであり、まだ他のやり方もあることだろう。また、「集計してみましたら、メモピットにおいては1,000万枚以上配られていることになりますが、両商品ともまだまだ認知度が低く、逆にまだまだ市場があると考えています。」 まだまだ拡大の余地はあるはずだ。

 今後の展開について伺ったところ、「安価で広告効果の高い販促ノベルティのド定番になりたいと思っていますが、これを決めるのも生活者ですので、生活者の目線でモノ作りを続けたいと思います。また、人が便利だと感じる気持ちと広告へのニーズはほぼ万国共通だと思いますので、今後は海外へのネット販売を視野に入れ展開していきたいと考えています。」 という回答があった。良いモノを作って販路を拡大していくこと、やはりこれこそが基本となることは間違いない。同氏が信条としている “有言実行” の言葉どおり、今後も良い製品を生み出していくことだろう。

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